104 研究系及び研究施設の現状
森 田 紀 夫(助教授)
A -1)専門領域:レーザー分光学、量子エレクトロニクス
A -2)研究課題:
a)ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップの研究 b)液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップの研究:三重項準安定励起状態のヘリウム原子のボーズ・アインシュタイン 凝縮を実現するための実験装置の建設を行い,本年中に完成を見た。準安定ヘリウム原子線源は液体窒素または液 体ヘリウムどちらでも冷却可能な直流放電型であり,前方の固定スキマーに対して三次元的に微調整が可能である。 また,効率よく原子線を平行ビームにするためにスキマーの直後に直径10 cmのコーナーキューブプリズムを10個 用いたレーザーコリメーターを配した。ゼーマン減速器による減速後の原子はレーザーによって進行方向を30°曲 げられ,更に減速されたのちガラスセル中に導かれて光磁気トラップされる。その後同じ場所で磁気トラップされ, 蒸発冷却などによって極低温へと冷却される。磁気トラップは,いわゆるQUIC 型である。以上のような装置によっ て,間もなくボーズ・アインシュタイン凝縮が実現されるものと期待される。
b) 液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光:液体ヘリウム中に置かれた原子やイオンは泡や氷球を作ってその 中に納まっていると考えられるが,それらの原子やイオンのスペクトルを測定することによって泡や氷球の状態さ らには液体ヘリウムそのものの性質を微視的に調べることが出来る。本年は,液体ヘリウム中のユーロピウム原子 のスペクトルのフォノンサイドバンドを前年より低温で観測することを試み,ロトンサイドバンドとおぼしきピー クが観測された。さらに,加圧してゆくと,低圧では低周波側にのみ現れていたフォノンサイドバンドが高周波側に も現れることが観測された。さらにもっと加圧して(∼30気圧)固体ヘリウム状態になると,幾つかの独立したサイ ドバンドピークが顕著に現れることも分かった。これらの信号の意味付けや解析は現在進行中である。
B -1) 学術論文
T. YAMAZAKI, N. MORITA, R. S. HAYANO, E. WIDMANN and J. EADES, “Antiprotonic Helium,” Phys. Rep. 366, 183–329 (2002).
B -5) 受賞、表彰
森田紀夫 , 松尾学術賞 (1998).
B -6) 学会および社会的活動 学協会役員、委員
応用物理学会量子エレクトロニクス研究会幹事 (1984-1987).
研究系及び研究施設の現状 105 C ) 研究活動の課題と展望
ヘリウム原子のレーザー冷却・トラップについては,本年中に完成した装置を用いて準安定ヘリウム原子気体におけるボー ズ凝縮の実現を目指したい。さらに,ヘリウム3と4の混合気体の冷却も行い,ボーズ・フェルミ両気体の混合状態の物性な ども調べたい。液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光については,フォノンサイドバンドの観測を圧力や温度など様々 なパラメーターを変えて行い,その特性を明らかにして行きたい。